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ヒップホップ・ビジネス最前線! Mass Appealは本物志向の「作り手ファースト」で勝負する

「才能を支える。業界を変える。文化をつくる。」をテーマに掲げた、音楽と仕事の明日を考える1Dayカンファレンス「NSOM_HR」が11月30日(土)に渋谷・QWSで開催された。第3回となる本レポートでは、米国NYのメディア企業「Mass Appeal」のMatt Gralenを迎えたセッション「メインストリーム化するヒップホップ・ビジネスの最前線」の模様を振り返る。

コンテンツメーカーの新しいかたち

昨年9月、若林恵はライターの佐久間裕美子とともにNYにあるMass Appealの本社を訪問。そこでふたりは、コンテンツメーカーの新しい可能性を目の当たりにしたという。

元々はグラフィティ系の雑誌として1996年にスタートしたMass Appealは、2013年に現CEOが大御所ラッパーのNasとともにメディアブランドを買い取ると、そこから新しいビジネスモデルを提示する企業へと生まれ変わっていった。

Mass Appeal Magazines

かつて発刊されていた雑誌『Mass Appeal』。

彼らはNetflix、Showtime、HBO、CNNなどに自主企画・制作のコンテンツを供給するだけでなく、レーベル部門でも音源やミュージック・ビデオの制作などを行っている。さらにクライアントワークもお手の物で、Googleとのコラボでヒップホップの歴史を解説する動画やDoodle(特別な日にのみ掲載されるカスタムロゴ)を発表したり、『ゲーム・オブ・スローンズ』の解説動画制作などにも携わっている。

ヒップホップ誕生44周年を記念して公開された、その歴史を振り返るアニメーション。

『Game of Thrones』シーズン6終了時に公開された、これまでの物語をおさらいするために重要な数字をまとめたムービー。

全方位型のアプローチも目を見張るが、それに加えて驚かされるのが、多岐にわたるクリエイティブを小規模のチームワークによって生み出していることだ。佐久間はセッション中、このように語っている。

「Mass Appealは雑誌として始まったけれども、もはや雑誌は好きなときにしか作っていない。独自のプラットフォームもなければ、メディアカンパニーというわけでもない。それなのにメディアを大きく動かしていて、音楽から始まったライフスタイルを多角的に展開している。(昨年10月の)同じ旅で訪れたViceは、メディアとしていろんなことに取り組んでいるけど、(こちらは)4000人くらいの規模。それと対照的に、Mass Appealも動かしているものは大きいはずなのに、少数精鋭でスタッフは40人くらい。その仕組みに未来を感じた」

Mass Appeal5周年パーティーに出演したNasのパフォーマンス。

こういったことが可能になっているのは、Mass Appealがディストリビューションの部分をパートナー企業に委ねて、自分たちがコンテンツ制作に専念できる環境を作り上げているからだ。本セッションの開催にあたって、若林は以下のようなテキストを寄せていた。

これまでのコンテンツ企業にとって、コンテンツの制作と配信(ディストリビューション)はセットだった。配信チャンネルを自社の管轄下におくか、または流通網が新規参入の難しいハードルの高いものとして設定されることで、配信に対する権限を自らコントロールすることができた。新聞社は販売代理店網を自ら全国に敷き詰め、テレビやラジオは許認可によってコンテンツ配信の権利を独占的に有し、出版業は「取次」と呼ばれる流通業者を通してコンテンツを全国流通する仕組みをつくりあげた。
来たるべきコンテンツメーカーのかたち:ヒップホップコンテンツのプロ集団〈Mass Appeal〉に日本のメディアやレーベルが学ぶこと」より

かつてであればコンテンツ企業は、その音楽コンテンツなり、映像コンテンツなり、雑誌や書籍コンテンツを求めるオーディエンスを、ある現場(レコードショップや映画館や本屋など)へと「動かす」ことができた。主導権は供給サイドにあったわけだが、現在その関係性はきれいに逆転してしまっている。読者は、スマホを片手にしたまま「動かない」。であればこそ、コンテンツ供給者は、それぞれのスマホの画面まで出向いていかなくてはならない。しかも、その画面は熾烈な奪い合いの戦場となっているのだから、すべての読者のスマホに最適化されたかたちで情報は配信されなくてはならない、というわけだ。

そうしたなか、コンテンツメーカーは、コンテンツの制作とディストリビューションのスキームとを分離して考える方向へと、ますます向かっている。多チャンネル化がデフォルトの環境となり、読者・ユーザー・オーディエンスとの接触面を、プラットフォーマー(SNSや動画プラットフォームや各種ストリーミングサービスなど)に奪われている以上、コンテンツメーカーの戦略は、そこと「いかに戦うか」ではなく、「いかにうまく使うか」という戦略へと移り始めている。そして、アメリカのさまざまなメディア関係者は、それを実践する上で最も重要なことは「強いコンテンツ」をいかに制作し続けられるかだ、と口を揃える。

2011年に公開されたPusha TとTyler, The Creatorによる“Trouble On My Mind”のMVは4,000万再生を記録している。

Mass Appealは、アウトプットのチャンネルにはもはやこだわらない。むしろ、彼らは、ネタと切り口に合わせて、自分たちのコンテンツに最適なチャンネルを選びとることができる。SVODなのか、イベントなのか、ライブ配信なのか、ウェブなのか、音楽ストリーミングサービスなのか、コンテンツに見合ったディストリビューションチャンネルを、コンテンツ制作側は選びとることができる。どっちにしろ、プラットフォームサイドは、サービス規模が大きくなればなるだけコンテンツ不足に悩まされることにはなるのだ。クオリティがあって、ユニークな視点=コンテクストをもち、その上、確実に届くオーディエンスのコミュニティをもっているコンテンツメーカーが、そのコンテンツの出し先に困ることはない。

インターネットやSNSの普及もあり、ここ10年で音楽業界のあり方は激変し、メディアやレーベル、プラットフォームは改革を迫られてきた。そのなかでMass Appealは、時代に見合ったビジネスモデルでもって、コンテンツメーカーの新しい道筋を指し示している。彼らの方法論に、日本のメディアやレーベルが学ぶべきところは多いはず。今回、「NSOM_HR」に海外ゲストとして迎えられたのは、そんな背景がある。

Mass Appealの副社長としてストラテジーとオペレーションを担当しているMatt Gralenはビジネス畑の出身で、メディア・エンタメ企業向けの投資会社を経て、現在の役職に就いた人物である。セッションの前半では、彼のプレゼンテーションを通じてMass Appealの「ミッション」が説明された。

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ミッションの土台となる4本柱

Mass Appealは、アーバンカルチャーを代表(Represent)し、前身させていくこと(Progress)をミッションとしているエンターテインメント企業である。彼らのビジネスは、大きく分けて4つの部門から構成されている。Mattの発言を交えつつ紹介しよう。

1. Content
プレミアムな映画・テレビ番組の制作部門。

「大きなストーリーを、様々なプラットフォームを通じて紹介しています。私たちはハリウッドからもリスペクトを集めている、数少ない企業のひとつであると自負しています」

Mass AppealがプロデュースしたNetflixの番組「RAPTURE ヒップホップの世界」のトレイラー。

2. Music
自社でレコードレーベルを運営し、ときにブランドとのコラボレーションも行う部門。DJ ShadowやRun the Jewelsといった大物アーティストが所属するほか、故・J Dillaの作品などもリリースしている。

「Nasと提携して、2014年に音楽レーベルを設立しました。ここには有名アーティストから次代を担うプレイヤーまで、多彩な顔ぶれが在籍しています。(2018年からは)ユニバーサルミュージックがディストリビューション先となり、オリジナルの音楽を生み出しています」

DJ Shadowの最新アルバム『Our Pathetic Age』に収録された“Rocket Fuel feat. De La Soul”。

3. Creative
クリエイティブ・ブティック(専門分野に特化した広告制作プロダクション)として、GoogleやHBOなどのクライアントと制作を行う部門。

「私たちはマーベルやHBOといった世界トップのブランドと付き合い、広告代理店のように業務代行しながらクリエイティブ面をサポートしています。今日のユーザーは目や耳が肥えているので、フェイクは一発で見抜かれてしまう。そのなかでMass Appealは『オーセンティシティ』(本物)を知る立場として、ブランドが想定しているオーディエンスにどうやってリーチすべきか、コンテンツプロダクションからカルチャーにまつわるアドバイスまで、様々なアプローチを通じてサポートしています」

4.Digital & Ventures
ソーシャルコンテンツを駆使しながら、自社コンテンツをユーザーに直接届けるための部門。

「私たちはひとつのブランドとして、自分たちのオーディエンスに向けて、文化のパイプワーク(つなぎ役)を務めています。人間の体でいえば脈を探るように、SNSやポッドキャストなどあらゆるソーシャルコンテンツを駆使しながら、ユーザーが求めるものに合致するクリエイティブを追求しています」

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ヒップホップは共通言語

この「Content」「Music」「Creative」「Digital & Ventures」という4本柱を組み合わせることで、Mass Appeal独自の360度エコシステムが形成され、それによってより大きなものが発信できるようになる、とMattは説明する。この話を踏まえて、上述したMass Appealの「ミッション」についても掘り下げられた。

Represent:
Mass Appealはアーバンカルチャーのネイティブであり、自身がこのカルチャーを代表する立場にあることを確信している。「ヒップホップはここ50年間における最大の文化ムーブメント。『ただの音楽ジャンルでしょ?』と思っている人も多いかもしれないが、Mass Appealは単なる音楽以上のカルチャーとして捉えている」とMattは力説する。彼いわくヒップホップはスポーツ、エンタメ、アート、政治、ビジネス、テクノロジーに至るまで影響を及ぼしてきた共通言語(Root Language)であり、そこから形成されたアーバンカルチャーこそが、今日のメインストリームを支えている。その影響力はアメリカのみならず、インド、ヨーロッパ、ラテン、アジアなど世界中に広がっており、ひとつのカルチャーとして受け入れられている。

Mattはそのあと、「こうした文化を広めていく役割において、私たちはチャンピオンを自負しています」とも語っていた。雑誌時代から数えると20年以上、Mass Appealは「当事者」としてアーバンカルチャーの魅力を伝えてきた。ヒップホップの歴史とともに歩んできたMass Appealはいわば生き証人であり、だからこそ、オーディエンスに届ける際のマナーや「刺さる」ノウハウも熟知しているというわけだ。

Mass Appealの人気動画シリーズ「Rhythm Roulette」では目隠しをして3枚のレコードを選び、そのレコードをサンプリングして曲作りをする。最多再生回数を記録しているのは9th Wonder。Mura MasaやTom Mischといったイギリス勢、88risingのJojiなど幅広く出演している。

Progress:
先に説明した4つの部門は、それぞれ独立したアセットとしても成果を上げている。しかし、その4つを統合した360度エコシステムを形成することで、より多様なアプローチを実現し、さらに高度なストーリーを生み出すことができるようになる。

その好例が、Wu-Tang Clanの結成25周年を記念したドキュメンタリー・テレビ番組シリーズ『Of Mics And Men』であるという。核となる「Content」で全4話を放映。エミー賞にノミネートされたほか、サンダンスやトライベッカといった映画祭でも上映された。「Music」ではウータン・クランによる番組オリジナルのサウンドトラックを制作している。

2019年に公開された『Of Mics And Men』の監督を務めたサシャ・ジェンキンスは過去にもヒップホップのドキュメンタリーを手がけている。

「Creative」ではパートナー企業とも手を組みながら、マーケティング計画もみずからプロデュースし、番組に出演したタレントやインフルエンサーたちと一緒にストーリーを発信。そして、「Digital & Ventures」では、上述のサントラも含めて、ビデオシリーズやポッドキャストなどさまざまなプラットフォームで放映された。Mass Appealのポテンシャルが最大限に発揮された典型例だとMattは語る。

最後に、2020年以降の展望についても、4つのアングルから紹介された。

1. Audience
「私たちにしか語ることのできないストーリーを、より多くの人々に提供していくことが自分たちの使命だと思っています。単なるエンターテインメントだけではなく、もっと大きい意味でのカルチャーに貢献していきたいです」

2. IP(知的財産)
「ヒップホップは2023年に誕生50周年を迎えます。それを記念して、このカルチャーが生まれたNYサウスブロンクスに『The Universal Hip Hop Museum』を建設します。これは数年越しのプロジェクトで、私たちはメインアドバイザーとしてタレントやコンテンツを集めながら、映像コンテンツや博物館という場所、デジタルプラットフォームまでフル活用した360度エコシステムによって大きく盛り上げていくつもりです」

「The Universal Hip Hop Museum」のトレイラー。

3. Brands
「子ども向けのマーケットはアメリカだけで1000億ドル規模になるのに、アーバンカルチャーに対応したキッズブランドはこれまでありませんでした。自分を育てたカルチャーを継承したくても、それができないのは問題です。社内でも子持ちのスタッフから後押しの声があり、キッズのためのアーバンカルチャーブランド『MAJR(Mass Appeal Junior)』を2019年に立ち上げました」

4. Global
「2019年8月にMass Appeal Indiaを設立しました。インドでは実在するムンバイのラッパー、DIVINEの生涯を描いた映画『ガリーボーイ』が大ヒットしていて、オスカーにもノミネートされそうな勢いです。すでにインドには、1億人ものヒップホップファンがいます。K-POPが世界中でアピールしているように、インドから世界に向けて発信できるようになれば、大手のブランドやプラットフォームも注目するようになるでしょうし、市場として大きな可能性を感じています。このように、グローバル規模で新たなマーケットにアピールしていきたいです」

DIVINEの楽曲“Kohinoor”。彼はムンバイのスラム街出身だという。

大切なのは「本物」であること

セッション後半では、佐久間と若林、NSOMボードメンバーの岡田一男も登壇して、Mattとのトークが繰り広げられた。

まずは佐久間が、「ニューヨーク・タイムズも新聞として始まったけど、いまやただの新聞ではない。動画コンテンツやポッドキャストやプレイリストも作る一方で、紙の購読者には特別なコンテンツを提供したりと、全方向的なマルチメディア化が進んでいる。でも、みんなプラットフォーム、メインの箱を持ってるのに、Mass Appealにはそれがない。ある意味、いちばん進化している形なのかもしれない」と語る。

先に引用した若林のテキストを繰り返すと、SVOD(サブスクリプション制動画配信)でいえばNetflix、Showtime、HBOというふうに選択肢が揃い、多チャンネル化がデフォルトとなった今日、コンテンツメーカーの戦略は、そこと「いかに戦うか」ではなく、「いかにうまく使うか」という戦略へと移り始めている。配信プラットフォームが増えていけば、コンテンツが常に足りない状態になっていくのは明らかで、どの配信業者も、強いファンベースをもった強いコンテンツメーカーのコンテンツを欲している。そういったニーズに応える形で、Mass Appealは「作り手ファースト」のブランド(メディア/レーベル)像をいち早く実践している。

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そのように、パートナーシップを築きながらディストリビューション先を押さえ、コンテンツ制作に特化するというストラテジーは、いつ頃から表面化していったのか。若林の質問に、Mattはこう答えている。

「雑誌をやってたときからハイレベルなコンテンツを生み出していましたが、その頃はまだ、自分たちの声を届けるためのパースペクティブは持ってなかったはずです。そこで、次のレベルにどう持っていくか考えたときに、当時の映画やテレビが退屈だったので、もっと面白いものが作りたくなったんです。私たちは“いいね!”がほしいだけの陳腐なコンテンツ制作には興味がありません。それより、カルチャーに新しい波をもたらすようなものを作りたいんです」

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続けて佐久間が、「プラットフォームが変容していくなかで、ニューヨークのメディアカンパニー全体が自分たちを見失った時期があった。Mass Appealにもそういう時期はあった?」と質問。それに対してMattは、「2012〜17年くらいに、デジタルメディアにどんどん投資していく時期がありました。その頃、Viceは50億ドルもの価値が付いたりしました。でも、そういったアプローチはMass AppealのDNAにはなかったのです。私たちは儲かることを考えず、ひたすら仕事しながら前進してきました。プレミアムなコンテンツを作るノウハウはあったので、そちらにずっとフォーカスしてきたのです」と答える。

さらに若林が、「ただクオリティの高いものを作れます、ってだけではダメ。Viceでいえばミレニアル系のメディアをミレニアルが作ってるというふうに、いまは自分たちがカルチャーのネイティブ、当事者であるというのが重要になっている。Mass Appealの場合も、自分たちのオーディエンスをもってるのは、それまでのプロダクションのあり方とは違う機軸なのでは?」と指摘。それに対してMattは、「Mass Appealのスタッフは、実際にアーバンカルチャーのなかで育ってきました。だからこそ、『次に来るのはなんだろう?』というのが肌感覚でわかるんです。ドキュメンタリーを作るときも、Wu-Tang Clanと同じような境遇で育ってきたので、“本物感”を出すことができる。そんなふうに私たちは、オーセンティシティという旗を振りながら業務に取り組んでいます」と答えた。

この回答には佐久間も、「メディア企業がオーセンティシティを掲げるようになったのは感慨深い」と感銘を受けた様子。「まだ音楽業界が大きかった頃は、“これくらいでいいでしょ”というような、オーディエンスに対する上から目線があった。それと違うのは、当事者に近い人が作ってるところが大きいのかもしれない」と彼女が続けたように、Mass Appealが実践している「作り手ファースト」とは、音楽好きからプロップスを集める音楽のエキスパートが、音楽への愛情に満ちたコンテンツ作りに専念できるという、理想的でもあるし、至極真っ当ともいえる制作環境をとりもどす動きのようにも映る。

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もちろん、クライアントワークにも携わるMattは、プロとしての配慮も怠ってはいない。「たしかにオーセンシティも大切だけど、オーディエンスが求めるものを届けることも大切。私たちはいつも、教育とエンターテインメントのバランスについて話し合っています。自分たちの映像作品ではヘビーな物事も扱っているけど、そこにライトなユーモアも添えるようにしていて。アメリカとそれ以外のオーディエンスで受け取り方もきっと異なるでしょうし、どんな人生を送ってきた方でも理解できるストーリーにするよう心がけています。ひとつの試金石として、私は自分のお母さんを想像するようにしているんですよ(笑)。ウチの親がこれを見てどう思うかなって。そんなふうに、いかにエンゲージさせていくかも心がけています」と彼は話している。

先のプレゼンテーションでもあったように、ヒップホップを背負ってサブカルチャーからメインへと押し上げ、さらに世界中に広めていくことがMass Appealのミッションである。若林も語っていたように、ヒップホップが世界のカルチャーにおける中心を占めるようになった一方で、日本はその感覚をいまだインストールしきれずにいるわけだが、これからグローバルとアラインしていくなかで、Mass Appealはよきパートナーとなりうるかもしれない。

最後に岡田が日本のことをどう見ているか尋ねると、Mattはこんな微笑ましいエピソードを明かしてくれた。

「今朝ここに向かう電車のなかで、トラヴィス・スコットを聞いている青年を見かけたんです。それで思わず、『君、ヒップホップが好きなの?』と話しかけてしまって(笑)。彼は日本でもヒップホップが流行ってると言ってました。そのおかげで、日本にもヒップホップが音楽以上のカルチャーだと知ってる人がいることを実感できたんです。Mass Appealは、そういう人々の架け橋になれたらと思っています」

写真:HAYATO TAKAHASHI
文:小熊俊哉